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その後もしばらく会話を楽しんでいると、「失礼します」と女将の声がした。
「どうぞ。」
カカシの応答の後、襖が開き女将と若女将が食事を運んできた。
「こちらが“鈴蘭鍋”です。」
女将達はそう言って、机の上に一つの鍋を置き、「ごゆっくりどうぞ。」と言って戻っていった。
「じゃ、いただきましょうか。」
カカシが鍋の蓋を開けると、ふわわ~と白い湯気が飛び出し視界が湯気に包まれ、イルカの顔が消えてしまったが、すぐ、鍋と同時にイルカの顔も現れる。
イルカはかなり目を輝かせ鍋を凝視していた。
カカシはイルカの時折見せる子供のようなそんな仕草や目の輝きが好きで、連れてきて良かったと感じた。
イルカの喜ぶ顔や、笑う顔が見れるだけで満足なのだ。
「うまっ!何ですか、これ!めちゃめちゃうまいじゃないですか!」
イルカは、さっきから一口食べる度に「うまい!」だとか「食べたことない!」とか言っている。
それは本当に子供のようで愛おしかった。
「いや~、イルカ先生にそんなに喜んでもらえるなんて連れてきたかいがありました」
ぐつぐつ煮立ち揺れているいる鍋の野菜を箸で取りながら言う。
その野菜を口に運ぶと、とても幸せな味がした。なんというか、野菜本来の甘みとはまた違う甘み。
これまでアスマと紅と3人でだったり、1人で食べに来てはいたが味わったことのないものだ。
これは他の奴と食べに来たって味わうことは出来ないだろう。
きっと、イルカと2人で食べているからこそ、味わえる甘みだ。
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