第壱譚「始動」

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現代で言うならば中世的な街並みが立ち並ぶとある市街地、空中を巨大な竜や異常な大きさの怪鳥が飛び交うとある世界 空中を紅蓮の光が彗星の如く通過していき、市街地からそう離れていない草原に降り立った 紅蓮の光は徐々に人の形へと収束していき光が爆散、光が収まると先程の紅い青年が草原に横たわっていた ―…数分程すると青年は目を覚ました、自分に起きた事象に思考が追いつかずに辺りを見回せば当然のように空中を悠然と飛ぶ竜や怪鳥が目に入る   「―…なんともファンタジーな世界に飛ばされたようだなァ。」   一通り辺りを見渡し終えた上半身を起こして市街地に目を留めた青年はポツリと呟いた、気怠げな言葉とは裏腹に青年の紅い瞳は好奇心に輝いていた   「そういや、なんで吾(オレ)は此処に居るんだ?」 そう一人呟いてみるも自分以外に人の居ない草原からは当然の様に返事はない、溜め息を零して恐らくこの世界へ飛ばされた原因であろう携帯端末を取り出した 落下の衝撃で電源が落ちたのか真っ暗な画面に映る自分の顔に何の変化も無い事を確認すると端末を起動する、毎日のように見る待ち受けを眺めてから「WTS」を開けば一言だけが暗い画面に映り出された  「E R R O R」 そして文字は消え去り次の文字が浮かび上がった 「WTSの誤作動を確認、修繕の為WTSは使用出来ません」   今この言葉程青年を苛立たせる言葉は無いだろう、青年は無言で端末の電源を落とすと起き上がり堅くなった体を解すように伸びをすれば深く深く溜め息を零して眼前の市街地へと歩き出した
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