第壱譚「始動」

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初老の女性から教えられた道を通って歩く青年は恐らく女性が言った図書館であろう建造物の前で立ち止まる、外見は端から見れば教会であり、その証拠のように屋根の頂点には十字架が立てられている 青年は訝しそうに建造物を眺めながらも歩を進め豪華な装飾の為された両開きの扉を開いて中に入った 「此は此は、まさしくして図書館だな」 青年が感嘆の声を漏らした、教会と思われた建造物内は外観だけでは分からなかったがサッカードーム程の広さがあり、内部には高さ10mはあるだろう本棚が所狭しと並び、その本棚には最早押し込んでいると言っても過言ではない程に本が収められていた 「短期間とは言えど、滞在する世界の事は知っていて損はないしなァ」 青年は何故だか元居た世界と同じ言語で書かれた本棚のジャンルを見ながら「歴史」と書かれた本棚を見つけ出して一冊の分厚い本を取り出す、題名は「この地の歴史」、なんともシンプルだが分かりやすい その分厚い本を30分かけて読破して本棚にしまえば青年が欲しがっていた情報は粗方手に入れるコトはできた 「まさか吾の居た世界よりも遥かに遡った時代のような世界に来るとは、運が良いのか悪いのかねェ」 分厚い本に寄れば、この世界は「レマニセンス」と言う世界で今は「クリム」と「アブソルティオン」と言う国が宗教の違いから対立して戦争中である また地図によるとこの街は「サイン」と言う名の市街地で「クリム」領内であると言うコト 「意外と面倒な世界に来てしまったのかねェ」 読んでいた地図の記載された本を閉じて天井を仰いだ青年はそう呟いて本棚に本を押し込むようにしまえばその場を去ろうと出口に向かい、出口から横に伸びる通路を見つけた 入った時は感嘆していた為に気づかなかったようだが、この建造物の何処かへと繋がっている筈だと確信した青年は迷いもせずに通路を歩き出した
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