Ⅰ.鏡の国から

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とある国のとある城に、世界一美しいと言われる姫がおりました。 姫は、アリアは、世界で最も美しいのは自分自身だと、毎日毎日鏡ばかりを見ていました。 ある日アリアは、その鏡さえ美しくしようと、町から腕の良い若い彫刻家を呼び寄せました。 城のお抱えとなった彫刻家は、カノンは、その情熱の全てを鏡へ注ぎました。 そしていつしかその情熱の全ては、紛れもなくアリアの為のものだと確信するのでした。 そしてアリアもまた、カノンの情熱の横顔に真の美しさを見ていました。 二人は互いに心ひかれながらも、決して身分を越え結ばれる事はありませんでした。 時は流れ、カノンの想いが強ければ強い程、鏡は美しく飾り立てられました。 それはまさに世界一と呼ぶにふさわしい美しさを誇っていました。 しかしアリアは、カノンへの想いとは別の大いなる矛盾にもさいなまれていました。 そう…。 「世界一美しいものは、この世に二つはいらない」  
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