Ⅰ.鏡の国から

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溢れ出す涙をぬぐう事もなく、アリアは城を飛び出していました。 アリアは思いました。この涙は自分の為ではなく、両腕を落とされても沈黙を守り抜いた、カノンへの慈しみの涙であると。 カノンがくれた涙であると。 カノンは私が教えてくれたと言った。けれど本当に教えてくれたのはカノンだ。 愛とは…無償の愛とは、無限の理解と沈黙であると。 永遠に遥か遠く、最果ての荒野に独りぼっちの影が、ぽつんと小さく浮かんでいました。それは紛れもなく、絶望に両腕をもがれた希望の人、カノンでした。 最果ての荒野で出逢った二人は、言葉もなくただ強く抱き締め合いました。 “ あぁカノン…私を愛する人。そして…私の愛する人 ” カノンもそれに応えました。 “ ああアリア…僕の愛する人。そして…僕を…この僕を愛してくれるんだねアリア ” カノンの瞳はまるで、鏡の照り返しの様にアリアの姿を映していました。そして澄んだ湖をたたえたその瞳に、アリアはいつまでも幸福の涙を流し続けました。 鏡の様に二人同じ愛を映して。 永遠の美しさと共に……。  
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