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溢れ出す涙をぬぐう事もなく、アリアは城を飛び出していました。
アリアは思いました。この涙は自分の為ではなく、両腕を落とされても沈黙を守り抜いた、カノンへの慈しみの涙であると。
カノンがくれた涙であると。
カノンは私が教えてくれたと言った。けれど本当に教えてくれたのはカノンだ。
愛とは…無償の愛とは、無限の理解と沈黙であると。
永遠に遥か遠く、最果ての荒野に独りぼっちの影が、ぽつんと小さく浮かんでいました。それは紛れもなく、絶望に両腕をもがれた希望の人、カノンでした。
最果ての荒野で出逢った二人は、言葉もなくただ強く抱き締め合いました。
“ あぁカノン…私を愛する人。そして…私の愛する人 ”
カノンもそれに応えました。
“ ああアリア…僕の愛する人。そして…僕を…この僕を愛してくれるんだねアリア ”
カノンの瞳はまるで、鏡の照り返しの様にアリアの姿を映していました。そして澄んだ湖をたたえたその瞳に、アリアはいつまでも幸福の涙を流し続けました。
鏡の様に二人同じ愛を映して。
永遠の美しさと共に……。
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