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真っ赤に火照った頬のまま、無言で着替えはじめたおれ。
少しの間感じてたじんの視線は、着替え終わって見たときには窓の外に向いてた。
「なぁ、傘持ってきた?」
「当たり前じゃん。朝から降ってたし」
中身を整えるフリして、ごそごそと無意味にカバンを漁る。
「んじゃ、入れて。おれ忘れた」
「は?朝からめっちゃ降ってたじゃん」
「いーの。忘れたの!」
カツカツと歩み寄ってきて、立て掛けてあった青い傘を掴んで。
「帰ろ?ケーキ買ってやるから、お祝いしようぜ?」
振り向き様の笑顔に、うん、っと勢いよく頷いた。
- END -
~おまけ~
ひとつの傘に入るのは、ちょっと狭くて。
じんの匂いがすごく近くにあるのを感じて、恥ずかしくなる。
「なぁじん、なんでいつも傘持ってねぇの?」
ぎこちない照れ隠しが、そんな言葉ばかりを口走らせる。
「んー?かめと相合傘したいから?」
からかい口調で、にやっと笑って言うから。
おれはホンキになんかしなくて。
「聞こえなーい」
耳を塞いで、笑いながら返す。
雨の日の、誕生日の、帰り道。
今日は、雨。
キミと、ボク。
青い相合傘が、ふたりを繋ぐ。
- END -
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