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『あーゆーのってどう思う?』
不意に聞かれた。
頬杖をついて、どこか遠くを見ながら。
俺は口に運びかけた食後のコーヒーを離して、「ん?」と首をかしげる。
『あれ』
指さした方向には、最近はやりの映画のポスター。
「なに?見たいの?」
確かベタベタの恋愛もの。
身分の差だか戦争だかで引き裂かれるカップルの話しだ。
「オマエってあー言うの好きだっけ?」
聞くと、『んーん』と首を横に振って。
『いかにも燃えるような恋!って感じじゃん?
だから…「俺との恋は燃えない?」
相手の目を覗き込めば、『えっ』と目を丸くして。
途端に優しい笑顔になって
『意味ちげぇし』
そう言って、ちょっと目を伏せて。
コーヒーをすすった。
『でもさ、あー言うの、ちょっと憧れない?
いつかオマエと、あんな映画やってみたい』
じぶんで言った言葉に、照れたみたいにふふっと笑う。
『や、だけど実際は穏やかな方が好きだなー。……なんて?
障害なんてさ、ないならその方がいいし…』
ちょっと早口に捲し立てて、赤い顔をそっと隠す。
そんなキミを何よりも愛しいと思うこの気持ちは、
“燃えるような恋”とは違うのかな?
「ってかオトコ同士って、障害のウチに入んねぇの?」
苦笑いして言った言葉に、分かりやすく赤くなったオマエ。
『え、あ、そっか…』
照れ隠しか慌てて掴んだコーヒーカップが滑って、カチンと音を立てた。
「そんなコトにも気づかないくらい、俺との恋愛は自然だった?」
からかいの言葉は予想外に甘い。
真っ赤なオマエの、上目遣い。
「今キスできないのって、かなりの障害」
笑ったら、小さく『うん』ってうなずいた。
『やっぱ、すっごい、燃えてる』
うなずき合って、こっそり笑った。
そこに燃える恋の炎は大きくて。
そして暖かいんだ。
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