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いつもそう。
勝手に拗ねて、勝手に怒って、
だけど迎えに行けば会えるように、アイツは必ずそこに居るんだ。
ウチの近くの小さな公園。
真ん中に古い滑り台があるだけの。
独りでポツンと座って、俺が迎えに来るのを待ってるのに
「じん、帰るぞ」
そう差し出した手をチラッと見て、プイっと顔を反らした。
「………何しに来たの?」
意地っぱりな言葉に、ふっと優しく笑って。
おれはいつも言うんだ。
「俺の大事なもん、取り返しに来た」
お前が隠すから悪いんだろ、と。
にへっと照れたように笑う顔は、本当に歳上かと思うくらいに幼い。
「俺が好きなのはじんだけだよ、」
伝えたら伝えた分だけ、キミが俺を好きになってくれると信じて。
いつも追いかけてるのは俺の方。
滅多にきみからの愛は聞けなくて。
だから俺もたまには、拗ねてみてもいいかな、って。
じんがいつも隠れてる公園の滑り台に独りで登った。
そこはひんやりと冷たくて、俺の体温を予想以上に奪った。
夏も終わる季節。
アイツとの約束の時間になっても、俺はそこを動かずに。
落ちていく夕日を見ながら、迎えに来るのかと不安になったんだ。
「じんのバーカ…」
呟いた言葉は薄暗い空に消えた。
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