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「だれがバカだって?」
投げ掛けられた、聞き覚えのある声。
目を向ければ、公園の入り口に立つじんの姿。
膝に手をついて息を整えながら、その目は俺をしっかりと捉えて。
「え、」
声にならない声が口から漏れた。
途端、キレイなアーモンド型の瞳が見開かれる。
それはきっと、俺の頬を流れる温かいもののせい。
「な、に…泣いてんだよ…」
狭い公園。
入り口に立ったじんを、小さな街灯が照らす。
「カメが約束すっぽかしたんだからな」
プイっと怒ったようにそっぽ向いて。
「………ごめん」
ただ一言、そう言った俺に
「じゃあこっち来てよ」
そう言って両手を広げた。
包んでくれる暖かい、優しい両腕。
街灯に照らされた二人の影がそっと重なった。
「カメ、冷たい」
凍えきった心と身体に、彼の温度が染みてく。
「じんが遅いからだろ」
急に甘えたくなって、その胸に顔を擦り付けた。
「…でも、心配したし」
きゅっと強くなった腕の力。
「俺の気持ち、ちょっとは分かった?」
ワザと意地っ張りな言葉で、唇を尖らせてみた。
「でも、…ご、」
ごめん、の一言はじんが奪った。
紅くふっくらとした大好きな唇が、薄い俺のそれを優しく塞ぐ。
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