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ユーリは、タィリを見て黙ったまま続きを聞いた。
「シトラス夫妻に君を預けて居る間、政府は君の出生を洗ったんだ。其処で、目覚めた特種と瞳の色を考慮して、シトラス夫妻に事故が無ければ、君を正式に政府が保護する段取りだったと、話を聞いているよ。ただ、今となっては、ラグスと資料を誘い出す手段になり果てているけどね」
「わーーね。講師さんは、敵? 味方?」
外套を羽織直すタィリは、ユーリの問い掛けに肩を竦めた。
「御想像に任せるよ。しっかし、ラグスの奴遅いな? 捕まったか?」
そのまま話を盛大に逸らされたユーリは、追い付かない頭を整理するので大変だった。
分かったのは、政府が自分を欲しがって居ること。
どうしても、理解できないのは、シトラス夫妻に何が起きたのかということだ。然し、タィリはそれ以上詳しい話はしてくれなかった。絶対に、何かを知っている筈なのにと唇を噛んでいると、慌ただしい足音と共に、扉が開き、ラグスが転がり込んできた。
「講師。今すぐ北へ向かいますっ。ルイも北で待つと連絡が入ってるんで」
随分、窶れた顔で、白衣もズボンも汚れに汚れている。タィリが、ユーリの縄を解いて答えた。
「簡易的な話は済ませたからな。後は、お前ら次第だーーそれと、こいつは俺が預かる」
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