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ぽっかりと空いた穴。風通しが無駄に良くなった部屋で、二人は顔を見合わせている。どちらとも無く、動き出したのは、春風が、湧き上がっていた煙を消してからだと言える。
「どうすっかな」
ラグスが言った。
「僕に聞かれても困るよ。講師さんはなんなんだい」
ユーリも、そう聞き返すしかない。残念ながら、タィリの行動を見ていても何がしたいのか理解しかねていたのだ。まず、敵か味方かわからない。だから、ゆっくりと移動し始めたラグスに聞いたのだが、ラグスの答えは恐ろしく素っ気ないものだった。
「恩師だ」
「もっと、説明がないと分かんないよ。ルイって誰」
「同級生で、神様を創っちまったあほな女だ」
「神様を創ったーー例の気紛れ神様かい?」
とりあえず、北に行く。疑問符を投げたユーリに対して、ラグスがそれだけを言い放ち、用意していた馬に乗る頃、また、夜は近付いて来たといえる。
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