1.芦別岳上空

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山の天気は変わりやすいとはよく言うが、まさか吹雪になるとは思って居なかった、俺はその日2機編隊を組みあらかじめ決められていた哨戒と言う名のお散歩に出ていた、こういう時にしか演習場から出る機会など無いんだが、平らな演習場ばかりにに居ては体が腐ってしまう、勿論比喩表現だがうちの隊長はそんな冗談が通じない。   出発時には空を覆うだけだった雲から雪が降りはじめ、帰る頃には吹雪へと変わって居た、視界が悪くなり数メートル先を飛行する僚機すら見失いそうだった。   「待って下さい隊長、視界が悪く前が見えません」   数10メートル下の足元は山岳地帯のはずだが、視界は雪に覆われ何も見えない、それにSARが補正をかけて地面の輪郭を映し出している、ホワイトアウトしてしまいそうな視界の中隊長に呼びかけるが、返事が無い何故だろうと思った次の瞬間、一層雪が激しくなり風に機体が煽られ隊長機を見失ってしまった、幾度も幾度も通信を試みたがなんの音沙汰も無い、周波数を変えても返事が無い、計器の故障かとも考えたが吹雪になる前までは普通に通信が出来たんだそれが突然なんの前触れも無く故障するなどあり得るのだろうか……。   内心焦った、GPSは機能している、場所は見失って居ない、そのはずなのに無償に不安にかられた、だから俺は焦ってジェットを噴かしスピードを上げたんだ、その時だった、アレと出会ったのは。     レーダーシステムになんの反応も無く、それは目の前に現れた、突然視界を覆う緑色の機体、手足と翼の生えたその姿はマヴェリックかとも考えた、自衛隊のマヴェリックにも緑色の機体は居る、しかし少なくとも北海道に配備されているマヴェリックにそのような機体は居ない、つまり手足が生えた未確認飛行物体である、お互い正面ですれ違い緑色の未確認飛行物体を再び確認する為振り返った。   その機体も反転しこちらに振り向き、その姿をしっかり確認出来た、全く知らない機体だ、マヴェリックのように人型でフライトユニットらしい翼が見えたが、細身なその姿はマヴェリックは勿論、ソ連軍のペトルーシュカや中国のウォイェン、イタリアのバレーリノとも違っている、そもそもマヴェリック以外の機体はフライトユニットを有して居ない、こんな機体の存在も、開発されているという話も聞かない、何より見たことが無い装備をしている、まったくの所属不明機だった。
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