1.芦別岳上空

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レクティルが緑色の機体を捉たのと、押し迫る恐怖が反射的に指を握らせた、その動きに連動する右手に備えた20mmガトリング砲が火を噴いた、緑色の機体はまるで射線が見えているかのように左へと機体をひねり回避した、そもそもマヴェリックのような人型飛翔兵器との戦いなど、自衛隊は愚か、アメリカですら本来想定されては居ない、それを今俺は行っている、しかも本来対地兵器であるマヴェリックでだ。   緑色の機体は回避した直後には接近を再開し、横から切りかかって来た、俺は反射的に右手をその刀に差し出し、食い止めようとした、マヴェリックの腕だって金属だ切れるはずが無い。   その予測は大きくはずれ、刃は右腕にめり込み切り進んで来た、その瞬間、恐怖が体の支配権を握り、左腕のガトリングを緑色の機体へ向け放った、零距離では回避すら出来ずに緑色の機体は、カメラやセンサー複合体である頭を左腕で庇いながら距離を取り離れた、刀に切られた右前腕の機能は停止し、警告音を放っている。   「なんなんだお前! 司令部!司令部! 所属不明機と交戦中!」   相変わらず何の音沙汰も無く沈黙を続ける通信機に苛立ちを覚え、ディスプレイを殴りつけたが、状況が変わる訳でも無い、しっかりと操縦桿を握り直し、吹雪の中に浮かぶ緑色の機体を睨み付けた。   相手は左腕の機能を確認するように刀を左右に持ち替えたりしている、あいつの装甲は戦車よりも固いというのか、マヴェリックよりもしなやかな動きを見せているその機体に驚くが、相手の武器はあの刀一本しか見当たらない、こちらは片腕だがガトリング砲も生きているし、1発8千万円以上する99式空対空誘導弾が4発も搭載している、問題は今行われている交戦が無許可で行われていると言うことだ。   しかし相手はそんな事お構い無しに再び切りかかって来る、とっさに横にかわそうとすると警告音が俺の動きを止めた、所属不明機に夢中でいつの間にか山肌に接近していたのだ、右の視界一杯に迫る木々にマヴェリックの体勢を変え無理矢理着地を試みた所に、奴は容赦なく切りかかって来た、俺は右足を着いた時点で既に機能を停止している右腕を差し出した。   奴にマヴェリックの右腕を切り落とされ、俺は突然体勢を崩した、奴の蹴りを喰らったからだ、地面に叩き付けられ、フライトユニットが停止を告げ、苦し紛れに左腕のガトリングを放った。
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