祖父のカメラ

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高校受験が終わり、寒がりの私が冬の寒さからもようやく解放されようという頃、私は祖父から高校入学祝いにと年代物のカメラを譲りうけた。 いわゆるプロのカメラマンが持っているようなあれである。黒と銀の、重々しくもどこか脆く見えるモノトーンテイストのそれの名前は「ライカ」というらしい。 私自身はカメラに興味などあるわけではなかったが大好きな祖父からのプレゼントであったので、ありがとうおじいちゃん。大切にするよ。と祖父に出来る限りの感謝の言葉を述べたのだった。そして祖父もまた気を良くしたのか昔から何度も聞かされている若い頃の話をいつもの冒頭、いつもの語り口で私に聞かせ始めた。 またこの話か。と苦笑を浮かべつつも私は手の上で確かにその重さや質感でもって存在を主張するカメラを見つめながら、何処か遠くの、セピア色の風景をその瞳に映した祖父の話に耳を傾けるのであった。 あぁ、次はその腕の傷の話だよね、おじいちゃん。
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