祖父のカメラ

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それから数日後、私は現像の終わったフィルムを受取りに行き、その後早速自宅で写真を見てみることにした。 ピンぼけした風景写真や満点の笑顔を納めたみんなの写真。みているだけでもあの日の感動が蘇ってくる。 十分に写真を堪能した後丁寧にその写真をアルバムにしまい、私は幸福感の中で眠りに落ちた。 ――スタンドライト1つの明かりの中、私がいる。たまにある、夢の中で夢を知覚する夢。体の自由は効かないが夢の中で私は遠征の写真を見ていた。 みんなが写ったその写真は寝る前の記憶のままであった。 ただ一つ、写真の隅にこちらを指差す影がいることを除いて。 影は顔に黒いもやのかかった男性らしきものだった。当然不気味ではあったが所詮夢、と私は黒いもやの先を見つめるのをやめはしなかった。 しばらく見つめていると影の男は写真の中でゆっくりと近づいてきていることに気づいた。その体勢は変えず、切り抜きのままこちらに迫ってくるように。 さすがに気味が悪くなり、写真をしまうために体を動かそうと試みるのだが体は動かない。意思とは裏腹に私の視線は写真の中の影に釘付けであった。必死に動かそうとしてる間にも影はゆっくりと、しかし着実に近づいてきている。やがて写真の全面が影の体で埋まり、ついにはこちらを指す指が近づきすぎて写真を覆おうとしている。嫌だ!とぎゅっと目をつむろうとしたその時。ふと目がさめた。 呼吸は荒く、心臓の鼓動は胸を圧迫した。じっとりと汗もかいていた。私は飛びはねるように体を起こし、あの写真のおさめてあるアルバムを恐る恐る開いた。 夢の中で影がいた場所にはなにもなく、仲間達の満点の笑顔がそこにはあった。
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