祖父のカメラ

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目が覚めると私は白いベッドの上に寝ていた。…右目は光を失っていた。 周りを見て自分が病院のベッドにいることに気づいた時、両親が病室に入ってきた。私は泣きながら二人に抱きついた。 ようやく落ち着いた頃、両親から私が自室でカメラを持ったまま右目から血を流して倒れていたことを聞かされた。私はあの恐ろしい体験を思いだしてもう一度涙を流した。 しばらくの後検査を終えて私は病院を退院した。右目の失明の原因はわからないらしい。治る見込みもないそうだ。 家に帰ったあとは、まずカメラを処分することにした。祖父も訳を話せばわかってくれるだろうと思った。 「ただいまー。」 「おかえりなさい。どこ行ってたの?」 「んー、あのカメラを捨てにいってたの。」 「そう。ところで、あのカメラずいぶん高価に見えたけど元々どうして持ってたの?」 「言ってなかったっけ。おじいちゃんに高校入学祝いにってもらったの。」 「何言ってるの。おじいちゃんならあんたの高校受験の前に亡くなったじゃない。」 「え…?」 恐ろしい記憶の中の影にかかったもやの向こうに祖父の焦点の定まらない笑顔が見えた気がした。   終
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