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ガイルは鬼の形相で戦闘長を見る。
しかし、戦闘長の顔はいたって冷静そのものだった。
「ガイルよ…確かに私は奴を利用しようとしている。しかし、奴もまた…それは同じなのだ。虐殺を行い続けるために、軍を利用している。これで分かっただろう、奴という名の存在が。だから、今回は『神覇』一人に任せようと思っている」
「勝手にしろ!!」
ガイルはそう言うと、部屋を飛び出し廊下を走って行った。
取り残された戦闘長は深くため息をつき、こう言った。
「許せ…ガイル。S3とはそれほど危険が伴うんだ。下手をすれば、軍が崩壊するほどにな」
そして空は闇に包まれ、辺りには静寂が訪れるだけであった。
「くっそ!!」
寮の部屋では、壁に拳を叩きつけているガイルがいた。
そして、そのまま奥の寝室に行くとベッドに倒れた。
ベッドで横たわる中、ガイルの中では色々な感情が渦巻いていた。
リバルや娘のこと、魔族との戦争、『神覇』のこと、そしてS3のこと。
特に、2日後に出現するであろうS3クラスの魔族の軍勢が気になった。
本当に『神覇』一人にやらせていいのか。
自分たちは生き残ることができるだろうか。
戦闘長の言ったことが頭の中でリピートする。
それでも、頭の中のものを全て振り払うとガイルは深い眠りに堕ちた。
刻一刻と時は迫っていた。
…大戦への時が。
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