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朔と書いて、「はじめ」と読む。これが私の名前。
私が女だからよく「さくちゃん」って間違って言われるし、読み方を教えると男って勘違いをされる困った名前だ。
「朔。紅茶か珈琲どっちがいい」
紅茶みたいな色の髪を一つにしばっている彼は光兄さん。
よく「ひかる」だなんて読み間違える人が多いけど、兄さんの名前は「こう」だ。
私達、兄妹はよく名前を間違えて読まれる。これも共通点の一つ。
「光兄さんの髪を見てたら紅茶飲みたくなったから紅茶」
「朔も同じ髪の色でしょう」
そう言って光兄さんは笑った。
私達は双子だからか、共通点が多い。
親がハーフだか、クォーターだか忘れたけど、とにかくそのおかげで私達は日本人にはない紅茶みたいな色の髪で、目は青い。肌も皆と比べると白いらしい。
この容姿のおかげで色々面倒なことがあったけど、皆に言わせるとそれは嫌味らしい。
「はい、朔」
ぼんやりそんなことを考えてたらほんのり林檎の香り。
「アップルティー。珍しいね、フレイバーティーなんて」
ゆらゆらと揺れる煙に触れる。割れて消えるこの感じが好きだ。
「たまには良いかなって思って。それにパッケージが可愛くてさ」
そんなことを照れくさそうに笑いながら言う光兄さん。十八の男のくせに可愛い理由だな、なんて思いながら、紅茶をすする。広がる林檎の風味。これはこれでなかなか良いと思う。
紅茶を飲んでカップを置くタイミングが光兄さんと一緒で二人で少し笑った。
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