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「朔、それだと見にくくないの」
朝、苺が沢山入った光兄さん特製のイチゴジャムを垂れるほどに塗ったトーストを食べようとしたら聞かれた。
「何が」
「前髪。目が完全に隠れちゃってるじゃん」
そうだね、だなんて適当に相槌をうってトーストをかじる。うん、今日も美味しい。
「せっかく綺麗な目をしてるのに、勿体無いな」
「この目のおかげで色々大変だったんだから」
私の彼氏はあんたのその目に惚れて私をふったとか、あんたがそんな目をしてるから彼がちっとも私に振り向いてくれないとか、訳のわからないいちゃもんをつけられたり嫌がらせを受けてきた。
変な男につきまとわれたり、襲わそうにもなった。
「その話は知ってるけど、やっぱり勿体無いと思うんだ」
兄さんの視線を感じるけど無視をしてこれまたイチゴジャムたっぷりのヨーグルトを食べる。やっぱりヨーグルトとの相性は抜群だ。
「ねえ、朔。お兄ちゃんの話、聞いてるの」
「聞いてるよ。とにかく前髪は切らないから」
このやりとりは何回目だろうか。結構前からやっている気がする。
ため息が聞こえる。何時もの様に兄さんが折れるんだろうな。
と思ったら兄さんが隣まで来た。
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