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手で優しく目隠しをされる。珍しいなんて思っていたらパチンという音。何の音だろうか。
手が離れていく。私の視界が何時もより明るくなる。一番に目に入ったのは、朝の光に包まれて笑う私の大好きな兄さん。
「うん、やっぱり似合う」
さっき音がしたところを触る。ひんやりした金属のような物があった。
「これはヘアピン、だよね」
「正解。この前バイトの帰りにかったんだ」
朔に似合うと思ってさ。と光兄さんは相変わらず笑顔だ。
「とるよ」
言うのと同時にヘアピンに触れた。
そしたら右手を掴まれた。
「早いよ。せっかく朔の目が見えたのに。それにいいじゃないか、ここには僕しかいないよ」
「だけど、嫌なの」
光兄さんはため息をついて、優しく私の頭を叩いた。
「たまにはお兄ちゃんの言うことを聞きなさい」
光兄さんが珍しく折れない。
今度は私がため息をついた。
「わかった。今日だけね。それと家でしかつけないから」
光兄さんの目が大きくなった。
そしてすぐに微笑んだ。
「それでもいいよ。ありがとう」
前髪のカーテンがない私には、光兄さんのその笑顔は眩しすぎた。
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