浸水する揺りかごの上でワルツ

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「おいおい、本気かい?」 苦笑いを浮かべながらも、リズに手を引かれるまま揺りかごの脇に立つ。 「手は腰と、そう。じゃリズムに合わせて、行くわよ?ワン・トゥー・スリー、ワン・トゥー・スリー」 緩やかに、リズが腕の中で回転する。彼女のスカートの裾が長い髪が、回る。静かに、僕等はステップを踏む。 流れる、回る、回る。 きっと地球も、こういう風に静かに回っているのだろう。まるでワルツを踊るように。 地上の僕等を乗せて、静かに回る。 星が回る、流れる。時が流れる。 「リズムに合わせて、ワン・トゥー・スリー」 緩やかに、小さな娘が腕の中で回転する。 「パパってやっぱりダンス、下手だよ!」 「はいはい、申し訳ございませんね姫君様」 静かに、確実に、時は巡る。フィオは8歳になっていた。
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