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リズは、我が妻はいつだって正しい。
彼女の意見を、僕が否定した事は無い。ちょっと間違っているかな?と思う事は確かにあったけど、彼女の意思に頷いて最終的には了承してしまうんだ。
「船に乗らない?どうして!?」
「選定委員会の許可は下りています。決めたんです、僕達」
親類や友人は僕等の決心を聞いて皆驚嘆の声を上げ非難した。
「ここに居続けても、いずれ皆死ぬんだぞ?」
「眠っている間に楽園に辿り着けるんだぞ?子供はそこででも作れる!」
予定されている移民船への搭乗日、その一年前に僕等は子供を授かった。
3ヶ月目の受胎児検診結果を見て、医者は顔を歪めた。
「率直に申し上げます、お子様は諦めた方がよろしいかと」
「そんな!」
結婚して6年。やっと宿った命なのに!
憤る僕等に、だが医者は深く溜息をついて再度そう提案した。
「乳幼児でも、妊婦でも、正常ならばコールドスリープは十分に可能です。ですが奥様の中のお子様の遺伝子に……その、重大な欠陥が見られるのです」
現代の科学では治療法が無い、珍しい病気の遺伝子が有るのだと。
「発症がいつになるかは不明です、しかし成人まで命は保たないでしょう。今までの数少ない症例でも大体が10才前後に亡くなっています。長期間に渡るコールドスリープとワープ航法はお子さんには確実に耐えられないかと」
医者の言葉を聞いたリズは凄まじいショックを受けたようで、顔を真っ青にし硬直していた。
僕は「少し考えさせてくれ」と伝え病院を後にした。
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