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その中心にいる人物を目聡く見つけ出し、本間は隣に立つ雨流の袖を引く。
「今度は何だ?」
「お姫様、発見したんだけど」
「ああ?」
「お姫様だよ、お姫様。
蒼葵お気に入りのクールビューティ鷹野」
ほら、と本間が指差した先には、言う通り文化部の連中に取り囲まれた鷹野の姿があった。
教室でクラスメイトを相手にしていた時の比ではない。
明らかに迷惑そうな顔つきだ。
「行かなくていいの?」
隣に立ってそちらを見ている雨流に聞いてみれば、案の定素っ気ない返事が返ってきた。
「何で俺が行く必要がある?」
「うーん……。
同じクラスの誼で助けてあげる…、とか?」
「阿呆か」
「ですよね……」
雨流相手に一般的な考えなど期待してはならない。
この男の辞書には、人助けや親切などという言葉は収録されていないのだ。
それは重々分かっているのだが、気になる相手くらい助けてやればいいのではないかと本間は思うのだ。
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