57人が本棚に入れています
本棚に追加
誠藍学院創立以来の『問題児』こと雨流蒼葵の名(悪名?)は、この界隈の同世代で知らない者はいない。
「さっすが新入生代表。
早くも人気者だなぁ」
そんな泣く子も黙る…いや、泣く子を片っ端から蹴り飛ばしてしまうであろう雨流に話し掛けるという偉業(?)を成し遂げたのは、式場でも隣に座っていた本間だ。
「でも、誰も相手にしていませんって感じ?」
『触らぬ神に祟りなし』を徹底的に厳守する生徒たちの中で、本間だけは臆することなく雨流に話し掛ける。
成績の都合で、本間と雨流は中等部から同じ特進クラスの腐れ縁だった。
前の席から椅子の背に寄り掛かるようにして話し掛ける本間に、雨流は視線すら向けることなく言い放つ。
「馬鹿に興味がないんだろ」
あっさりとクラスメイトを馬鹿呼ばわりする雨流に、本間は呆れつつ苦笑した。
「馬鹿って……、蒼葵…。
ウチのガッコの偏差値、いくつか知ってる?
こう見えて結構高いのよ?
しかも一応特進クラスなんだけど…?」
綺麗に手入れされた金髪を弄りながら、本間は落ち着きなく椅子を揺らした。
見事なまでに脱色した髪がいかにも遊び人といった感じの本間だが、その外見とは裏腹に、校内模試では常にトップの座を欲しいままにしている頭脳の持ち主でもある。
「まあ、さすがに俺だって外部入試で全教科満点なんて、取る自信ないけどさぁ」
「お前はその気にならないだけだろぅが」
お前、と呼び捨てる雨流は、本間のフルネームを知らない。
最初のコメントを投稿しよう!