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適任者が誰かなど、不用意に聞いてはいけない。
「やだなぁ、先生。
このクラスで一番の適任者って言ったら、雨流君に決まってるじゃないですか」
にこやかに本間が言うと、教室内が沈黙に包まれた。
担任も、明らかに狼狽えた様子で黙り込む。
たとえ面識はなくとも、中等部からの引継ぎで雨流の情報(悪事?)は、しっかりと耳に入っているのだろう。
「いや……、雨流の意見も聞いてみないとだな…」
誠藍学院ではクラス委員は自動的に生徒会にも登録される為、素行の悪い生徒をむざむざと任命するわけにもいかず、担任教師は苦し紛れに呟いた。
だが、そんあ教師の都合など、本間は重々承知の上である。
別に委員の仕事が嫌な訳ではなかったが、片割れが鷹野であるならば、いっそ雨流とくっ付けてしまえと、本間なりの心遣いだ。
「なら、雨流君がやるって言えば、いいんですね?」
「………いや、まあ…。
そうだな……」
どうやら初日から難問にぶち当たってしまったらしい教師が頭を抱え込むのを尻目に、本間は雨流の横に立った。
「と、言うわけで蒼葵。
クラス委員やらない?」
「ああ?」
これまでの会話など微塵も聞いていなかったであろう雨流の不機嫌極まりない声に竦み上がったのは、話し掛けた本間ではなく、教師とその他大勢の生徒たちだった。
「だから、クラス委員。
俺と代わって欲しいの」
降って湧いたような本間の台詞に、さしもの雨流も眉間に皺を刻む。
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