57人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな雨流が脚を乗せている机に横から両手を突いて、本間は周囲に聞こえないよう小声で囁いた。
「蒼葵、鷹野狙ってるんでしょ?」
「それとこれとに何の関係がある?」
「クラス委員の相方、鷹野なの」
本間の言葉に、雨流は暫し考え込む。
「面倒な仕事は御免だな」
「蒼葵がクラス委員になって、面倒なんてあるわけないでしょ?
何から何まで言うこと聞いてくれるから心配ないって」
それでも直ぐには首を縦に振らない雨流に、本間は言い募る。
「それに、クラス委員は生徒会にも登録されるから、何かと融通も利くよ?
高等部の会長、瀬尾さんだし?」
中等部時代からの知り合いの名前を出し本間が笑えば、雨流も納得したように頷いた。
雨流が頷くのを見て、そうと決まれば話は早いとばかりに本間は前に向き直る。
「先生。
雨流君が代わってくれるそうなので、一組のクラス委員は鷹野君と雨流君でお願いしますね?」
「あ、ああ……。
そうか…、それじゃ、雨流、鷹野、よろしくな」
担任は引き攣った笑みを頬に張り付かせたまま、手元の書類に雨流と鷹野の名前を記入した。
学院きっての問題児の名前をクラス委員の欄に書き入れることになった担任も可哀相だが、もっと不幸なのは、意見を言う隙も与えられないクラスメイトの方かもしれない。
こうして、誠藍学院高等部一年一組の記念すべき一日目は、つつがなく(?)終わりを迎えたのだった。
最初のコメントを投稿しよう!