第一章 穏やかな日常

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「美紀には関係ないだろ?」  俺がそうごまかすとさらに迫力のある言葉で返ってきた。 「へぇ、そういう言い方するんだ。この修二のロリコン」 その言葉で貴一の目が、がらっと警戒の目に変わった。 「いくら恩人といえども妹に手を出したら許しませんよ」 「違う!そんなんじゃねぇよ!」 「じゃあなんでじろじろ見ていたのよ?」  訳を言うか言わないかで悩んだ。けどごまかせそうになかったから正直に言うことにした。 「俺、十二歳以前の記憶がないだろ?」 この言葉を聞いた貴一と桃花は驚いた。 「うん。それぐらいは知っているけど、それが女の子をじろじろ見るのと何の関係があるわけ?」 「幼い子は何を思って生きているのかなって思っただけだ。」  美紀はまだ鋭い目を残したまま。 「ふーん。まあ今はそういう事で許してあげる」 「許すって何だよ?俺はただ見ただけだぞ?」 「ハア」その時光輝からため息が聞こえた。  そして美紀が舌打ちするのを聞いた。 「ん?なんなんだよ?」 「いえ、全然なんでもないです」  光輝が隣でやたらとニヤニヤしていた。 「光輝さっきからなんか気持ち悪いぞ」 「大丈夫。なんでもないから」  貴一が聞いてきた。 「記憶喪失というやつですか?」 「ん、まあそんな者だ」 「いろいろ大変じゃあなかったですか?」 「軽く自分の人生を恨んだね。でも今は大丈夫」 「そうですか」貴一は穏やかな表情でそうつぶやいた。  月平が言う。 「じゃあそろそろ行こう」
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