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「ああ、そうだな」
それで貴一と桃花とは携帯電話の番号を交換して別れる事にした。
「じゃあさようなら」
「バイバイ」
完全にあの兄弟が見えなくなってから俺は光輝に聞いた。
「なあ光輝、貴一に対して何か違和感を覚えなかったか?」
「え?そうか?」
「いや、何も感じなかったならいいか」
俺たち四人はまた歩きだした。
美紀と仲良くなったのは、入学早々、あっちから話しかけてきた事にある。それだけといえばそれだけだ。俺は笑顔で話しかけてくる彼女を見て、嬉しくなった。
女友達なんて、まったくいない俺だったから、正直何を話したらいいか分からない。緊張も最初はした。
けど、美紀の笑顔とあの性格だ。今は自然と楽しく話せる。
彼女もまた、寂しい俺に居場所を作ってくれる、数限り少ない大切な存在だ。
月平の家の寺に着いた。高音寺とかかれていた。
「立派な寺だな」
「ありがとう、こっちだ。」
月平が手招きをして、離れの倉庫らしきところに来た。月平が鍵を開ける。中は意外と広く綺麗に整っていた。
「床はいつも掃除してあるから座っても大丈夫だよ」
「ありがとう。」
お礼を言って月平以外は座った。月平が引き出しを開けると中から書物が出てきた。
「これだ」
月平が書物を床に広げる。みんなで覗き込んだ。
「う、なんだこれ?」
光輝がうめいた。それもそのはず、なぜなら書物が難しい字で全然読めないからだ。
「月平これが読めるのか」
「これぐらいなら子供の時には読めていた。親父がうるさかったからな。」
「月平君、凄い。」
光輝が言う。
「じゃあ訳してくれ」
月平が頭をこくりと頷く。
「始まりの大地、西北西にあり。第二の大地、東北東にあり。第三の大地、南々西にあり。第四の大地、北にあり。第五の大地、南々東にあり。帰ることで門は開かれ中心に世界を紡ぐ者あらわる。けれど資格なしきもの姿を見せず意味無し」
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