プロローグ

2/2
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/88ページ
 夜遅くだった。いきなり子供が家に入って来た。 「誰だお前は!?」  お父さんはその子供を見ると怒鳴った。お母さんは後ろで僕の前にかばうように立っていた。外見の歳は僕とそんな変わらない。子供は今にも泣きそうな顔をして言った。 「大を救うためには小を切り捨てなければならない。」  お父さんはその言葉を聞くと分かったように話しを進めた。 「俺は俺なりの正義を持って生きてきた。だから政治に関して悔いはない。だけど我が子に関しては悔いが残るな。」  子供はナイフを取り出した。そのままお父さんの元に走っていき。僕は恐怖の中、必死でお父さんに逃げてと叫ぼうとしたが声が出ずお父さんもただ立っているだけで逃げなかった。 「ごめん。」  子供が小さく謝るとお父さんは床に倒れた。 「あなた!」  お母さんは父の元に走って行った。お父さんはかすれる声でしゃべった。 「すまんな母さん…先にいくよ…」 たったそれだけ…そうそれだけ話して父は死んだ。お母さんは泣いた。そして僕もお母さんにつれられて泣いた。そして涙で濡れる目で子供が帰って行くのを見た。恐怖で追いかける勇気はなかった。だけど憎くて憎くて、仕方なかった。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!