第一章 穏やかな日常

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 美紀が光輝を茶化すように言った。 「わー、光輝君ったら照れている」  俺も面白いので追いうちをかけてやる。 「まったくあんな大声で恥ずかしいったらありゃしない」  そこでついに光輝は顔を赤らめ黙り込んでしまった。正直にあの時は嬉しかった。あの一言が光輝の魅力なんだと俺は思う。  俺って何なんだろう?  よく思う。俺はどういう性格をしていて、どういう価値があるのか?周りの人は何気なく生活しているかも知れないが、俺は常に自分という存在を探している。時に自虐的になり、時に甘い妄想で、心を満たす。  そんな俺は、変わっていると自分でも認める。 時折襲ってくる、なんともいえない虚無感が大嫌いだ。  この虚無感はどこから生まれてくるのか?それも分からない。自分の虚無感に息を詰まらせてすごく苦しい。  だから俺は日々、この苦しさから逃れるために、自分のという存在を探している。  町の繁華街を歩いていた時だった。幼い女の子が焦った表情をして脇道から飛び出して来た。月平がすぐに尋ねた。 「どうした?何かあったのか?」 「お兄ちゃんを変な人達から助けて!」 その言葉を聞いた瞬間、光輝が脇道に走って入って行った。どうやら不良にからまれたらしい。 「美紀はここに残っていて!」  俺は美紀にそう言うと、美紀は黙ってうなずいた。そして月平と一緒に走った。見たのは不良四人が光輝を囲んでいる状態。後ろの方で自分達と同じぐらいの年齢をした男が、体に傷をつけて、地面に屈していたどうやら彼があの女の子の兄のようだ。 不良の一人はバットを持っていて、いきなり光輝向かって振りかぶった。しかしそれを光輝は軽くよけてしまった。 「お、剣道やったおかげかバットの動きがくっきりわかる。」
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