第一章 穏やかな日常

6/34
前へ
/88ページ
次へ
「お兄ちゃん!」  女の子は兄を見ると泣いて抱き着いた。 「ごめん桃花(とうか)、怖い思いさせちゃったね。助けを呼んでくれて助かったよ」  今あの桃花という女の子は今この場面をどう思っているのだろうか。幼い心を忘れた俺は気になった。 「ううん。この人達が声をかけてくれなかったら、助けなんか呼べなかった。」  桃花の言葉を聞き、兄は嬉しそうな顔をしてこちらを向いた。 「妹に声をかけてくれてありがとうございます。今この日本でこんなにも優しい人に会えて、とても嬉しいです。」  嬉しそうにお礼を言われると、こっちまで嬉しくなる。ん?そういえば誰が桃花に声をかけただっけな。光輝は最初桃花に気付いてなかったし、美紀は記憶にない。そうすると、月平だ。 「月平、お前意外と優しいな」  俺がそう月平に言うと。 「当たり前の事をしただけだ」 軽く流された。 「照れている?」と聞いたがそれ以上答えは返ってこなかった。  美紀が明るくみんなに言った。 「じゃあこの新たな縁を無下にしないで、みんなで自己紹介をしよう!」 「そうだな。僕の名前は二ノ宮貴一(きいち)そして妹の桃花だ。よろしく。僕が通っている高校は桜木高校。桃花も桜木付属小学校に通っている。」 「桜木高校だって!おいおいお前らスゲー頭いいんだな。」 桜木高校とは県下一といわれている私立の名門校だ。通う人もそれだけお金持ちが多くなるのでも有名である。 「俺たち四人は文代高校に通っている。俺は佐藤修二だ」 「杉原光輝だ」 「月平影政(かげまさ)。よろしく」 「只野美紀(ただの)。仲良くしようね」  ある程度の自己紹介は終わって、俺が桃花を見ていた時だった。 「修二、女の子をじろじろ見たら失礼でしょ?」  何故か重みのある言葉で美紀が言ってきた。
/88ページ

最初のコメントを投稿しよう!

5人が本棚に入れています
本棚に追加