PROLOGUE

2/2
430人が本棚に入れています
本棚に追加
/320ページ
その夜は雨が降っていた...      月の光は一切の闇を許さず、全てを目にいれた。  人だった物の破片は空に投げ出され、人だった物は地べたに転がり落ちる。  全ての声は消えることなく、恐怖を歌い天へと昇っていく。  降る雨は地に伏せるモノ全てを赤に染めた。     「あれは…生き物なのか!?」   密林の奥にある遺跡の上に 「あれ」はいた。   「あれ」は翼を広げ 月の光を飲んだ。   ひとつ、風が吹いた...。 そして人の破片は空へと 投げ出される。   「あれ」は翼を広げ 飛来する。月の光を 吐き出しながら。   勇なる声も断末魔へと 変わり、その持ち主も 人だった物へと姿を変えた。   肉を裂き 骨を砕き 臓をさらけ出し 四肢を引き千切った   「お前はここにいろ!!」 「お父さんは?」 「すぐ…戻って来るから」      こうして、戻って来ることのない父を待ってどのくらい時が過ぎただろうか。  一生とも思えるその時間は、太陽の光とともに沈黙をやぶり、月の時を露わにする。血と肉でできた絨毯は「生」を食らいつくしていた。      世界は、空は………赤く、青かった。
/320ページ

最初のコメントを投稿しよう!