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その夜は雨が降っていた...
月の光は一切の闇を許さず、全てを目にいれた。
人だった物の破片は空に投げ出され、人だった物は地べたに転がり落ちる。
全ての声は消えることなく、恐怖を歌い天へと昇っていく。
降る雨は地に伏せるモノ全てを赤に染めた。
「あれは…生き物なのか!?」
密林の奥にある遺跡の上に
「あれ」はいた。
「あれ」は翼を広げ
月の光を飲んだ。
ひとつ、風が吹いた...。
そして人の破片は空へと
投げ出される。
「あれ」は翼を広げ
飛来する。月の光を
吐き出しながら。
勇なる声も断末魔へと
変わり、その持ち主も
人だった物へと姿を変えた。
肉を裂き
骨を砕き
臓をさらけ出し
四肢を引き千切った
「お前はここにいろ!!」
「お父さんは?」
「すぐ…戻って来るから」
こうして、戻って来ることのない父を待ってどのくらい時が過ぎただろうか。
一生とも思えるその時間は、太陽の光とともに沈黙をやぶり、月の時を露わにする。血と肉でできた絨毯は「生」を食らいつくしていた。
世界は、空は………赤く、青かった。
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