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狩り場に着く手前、廃墟と化した村があった。
ハンターズギルドから派遣された馬車主の話によると8年前、飛竜に襲われて壊滅した。という話だった。
「…………」
ロイはその話の間、険しい顔をしていたコトにツバキは気が付いた。
しかし、理由を聞いたところで、いつものように誤魔化されるだけだ。そう思い、ツバキはあまり気に止めなかった。
「ロイさん、どうしたんですか?」
ジンもロイの様子に気付いたのか、心配そうに聞いた。
「………。いえ、ただ…ツバキもあなたの様に素直で良い子なら、友達も沢山できたんじゃないかと思いまして」
「…うるせえよ……」
ロイは深く考えているように、おでこに指を当てて返した。ツバキとしては、そこまで心配される必要は無い。
8年前といえば、ツバキがロイと出会ったのも8年前だ。
ツバキはロイに保護される前の記憶は無く、ロイを父親として、ハンターの師として育ってきた。
それ以前のことなどツバキは知りたいと思ったことは無い。
ジャングルのベースキャンプとなっている、目も眩むような高さの崖のすぐ傍にテントが設置されていた。そこからは高い崖から流れ落ちる大瀑布がいくつも見える。
「特産キノコがあるのは、区域2・3・9とその奥にある洞窟の中ですね」
ロイは支給された狩り場の地図に区域ごとに分けられた数字を指さしながらジンに説明した。
今回は比較的、危険の少ない、「特産キノコの採取」という依頼を受けている。
「私とジンで区域2・3を、ツバキは区域9と洞窟の中をお願いします」
「オレ1人で依頼達成するくらい採取して来るからよ。期待して待ってな」
ツバキは支給品の携帯食料を口に入れ、キャンプを後にした。
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