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ツバキは区域9へと到着したが、狩り場の異変に気が付いた。
特産キノコはモスという豚のような小型のモンスターの好物であり、モスを見つければ特産キノコも簡単に見つかる。
しかし、区域9に来るまで、草食竜アプケロスも、ランポスも、モスも、まだ目にしていない。モンスターの居ない狩り場は狩り場として成り立たない。
ツバキは洞窟の出入り口である、岩壁に囲まれた区域9にあった特産キノコを採取し、一旦ロイと合流するために、区域3へと向かった。
区域3は木々が天へと向かって立っている。そのため、太陽の光は地に届かず薄暗い。そして、遺跡へと繋がる入り口がある。
「あれはっ!!」
ツバキは、ロイの武器である、太刀<鬼斬破>が草の上に落ちているのを見かけ、駆け寄った。
すると、上の方から、ガッとツバキは肩を止める何かに掴まれた。
ツバキは突然、肩に何かが触れたため驚き、足を止めた。すると頭上から聞き慣れた声が聞こえてくる。
「…ツバキ……」
ロイの声が聞こえ、ホッとした。相変わらず人を驚かすのが好きなのか。ツバキは呆れてしまい、少し笑ってしまった。
「おい、何だよ。親父……」
ツバキはそう言いながら、ロイのいると思われる上に顔を向けた。
「お…親父………」
ツバキは声を失った。
いつもなら、そこには笑っているロイがいるハズだった。
しかし、ロイの下半身は牙の並んだ巨大な口の間に挟まれており、何かに喰われている途中。としか見えない。
この区域を覆う影が立ち並ぶ木々ではなく、この、何かが太陽の光を遮っているのだと分かった。
ツバキは背にある、甲虫の羽を加工して作られた双剣<インセクトオーダー改>に手を伸ばそうとした。
「ツバキ!逃げなさい!!」
ロイがそう言い終えると、ツバキの肩に置いていた、ロイの腕が、ブチブチと音をたて、地面に落ちた。
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