第1話『影』

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「ぅ……うわあぁぁーーー!!」    ツバキは先程までロイのモノだった、地面に落ちている腕を見て、無我夢中で走り出した。   「ハァ、ハァ………」    ツバキは気が付くとベースキャンプまで来ていた。    全力で走りつづけたツバキは、膝に手を置き、息をととのえようとする。   (ジン…ジンは!)    ロイと行動を共にしているジンはどこに行ったのかが心配だった。   「どうしたんですか?ツバキさん、血がついてますよ」    不意に後ろから話しかけられ、ツバキは一瞬驚いたが、ジンの声が聞こえ、無事だったのか。とツバキはホッとした。    しかし、髪や肩についた血が、ロイのあの姿が真実だった事、ロイにはもう二度と会えないのだと知らせる。ツバキは涙を流した。   「いや……べつに…」    ツバキはジンに背を向けたまま返した。    狩り場にいる今、ロイのことを話す気にはなれなかった。今ならまだ間に合うかもしれない父親のもとへ、また戻ってしまいそうな気がしたから。      街へと帰る馬車の中、ロイがいないのを不思議に思うジンに説明しながら、山にしずむ夕日を見ていた。    ツバキの手には、ロイの武器であった<鬼斬破>が握られていた。     第1話『影』 完
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