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今日も暖かい陽気の中私の一日は過ぎていく
店主のお爺さんもゆったりゆったりと昼寝を続ける午後、
少しばかり雲行きが怪しくなってきて辺りが暗くなってくるそうなるとさっきまでの陽気が嘘みたいに肌寒くなってくる
その寒さにヒーターの前で膝掛けをしているお爺さんももぞもぞと動き始める
いつもみたいに真っ白な長く立派な髭を撫でて咳払いを一つした
窓の外にまた視線をやると地面に黒い斑点がついていってそのまま地面を覆い尽くしていった
雨か‥
お爺さんの呟きが後ろの方で聞こえてさっきまで人通りのあった通りも雨から逃げるように人が一人もいなくなってしまった。
そんなときだったびしょびしょに濡れた女の子が店に入り込んできたのは‥
────カラン
────────カラン
ドアに取り付けられている鈴が少し錆びたような音を立てて少女を迎える
黒い髪に黒い瞳、すこし身震いする小さな体、お爺さんはそれを見かねて彼女をヒーターの前へと手招いた
「お嬢ちゃん、寒かったろ?」
お爺さんの頭を撫でながらの問いに彼女は控えめに頷いた、彼女は服が乾くまでヒーターに当たっていたのだが
服が乾いてしまえば周りを興味深そうに見回してそして私のところで目を留めた
そして先程までただガラス玉のように黒光りしていただけの虚ろな瞳に色彩が宿された
私を見て気味悪がる人は多いけどこんなに綺麗な愛らしい瞳で見つめられたのは初めてだった
「そのお人形、気に入ったのかい?」
その様子をみてお爺さんも何かを感じ取ったのだろう椅子の背もたれに背を預けながら、白く長い髭を撫でながら私と彼女を交互に見る
彼女はいきなりのことばに戸惑ったような顔をしたがコクンと小さく頷いた、それを見るなりお爺さんはゆっくりと立ち上がって私の体を抱くようにして彼女にへと差し出した
「どうぞ貰っていっておくれ、彼女も君のようなお嬢さんと一緒なら幸せだろう」
お爺さんのそんな言葉に女の子はまた戸惑ったような表情をする
そんな表情を見てもお爺さんは人の良さそうな笑みを浮かべてお金は要らないと口にした
お金で私が取り引きされないと知って私は少し嬉しかった、だってそうでしょう?
私と言う価値はお金で決められるモノじゃないんだから
この時の私は知らなかったの
嬉しそうな顔をして私を受け取った彼女の目の奥に潜む闇を
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