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「お兄ちゃん」
「ん、どうした理香?」
お兄ちゃんは靴紐を結びながら、私に笑い掛けた。
それは嬉しいんだけど、目の下の隈が不釣り合いで、かえって痛々しく思えた。
「今日、何時くらいに帰ってこれそうなの?」
「あ...そう言えば今日、理香の誕生日だったな。
うん、8時には帰れるようにするわ」
「本当!?やったぁ...」
正直、高校生にもなって誕生日で喜ぶ私はみっともないと思う。
でも最近辛いことしか無かったから、これくらいの幸せならいいよね?
お兄ちゃんとママと、一緒に笑ってもいいよね?
「ははっ。
理香はいつまでもガキだなぁ」
「うっさい!
いいじゃんたまには、さ」
「ん、そうだな。
じゃあ行って来る」
「行ってらっしゃーい」
お兄ちゃんの背中が遠くなる。
背負った用具のせいで、お兄ちゃんの頭が隠れてしまっていた。
「理香ー?遅刻するわよー」
「あ、うん」
一瞬、お兄ちゃんの側で何かが光った気がした。
太陽に反射した用具かも知れないけど、何となく気になった。
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