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「よお。何寝たふりしてんだ。
ホラ、帰んぞ」
上がる息を抑え、ゆっくりとベッドに近付く。
額に溜まった汗を拭く事も出来ず、足が震えた。
ピッ...ピッ と定期的に鳴る心電図を、壊したくなった。
「アレだろ?
俺をいい子にしたいからって皆でドッキリしてんだろ?
バレバレなんだよ」
返事は何も、聞こえない。
気管支に直接繋がれている呼吸機のせいだ。
そうに違いない。
だが、外せない。
風船みたく、そのままどこかに行ってしまいそうで、怖かった。
「こんな良くわかんねぇ機械いっぱい着けやがって...
手込みすぎだよ...」
一目で判る。
コレはもう、助からない。
理香が言うに、自立呼吸すらままならないのだから、もう永くない筈だ。
異様な量の点滴を見据えた時、急に現実味が増してきた。
今すぐ嘔吐したい気分を紛らわす為、俺はまた言葉を吐き出す。
「なぁ、なぁ父さん。
もうちゃんと学校行くからさ、目開けろよ」
「今まで悪かったって。
ホラ、若気の至りって事で許してくれよ」
「もう家にいるから...
何でもするから生きててくれよっ...」
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