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深夜遅くに鳴り響く突然の電話が、私に絶望という名の現実もしくは悲劇を連れてきた。
「はい、もしもし?」
『楠木さんのお宅ですか?』
「はい、そうですが…。」
『警察の者ですけど、落ち着いて聞いて………。』
でも私は、警察からの電話を落ち着いて聞けるほど場数を踏んでいるわけでもない普通の女子高生。
そこから先の話の内容は良く覚えていない。
どうやってここまで来たのかも覚えていない。
気がつけば、現実から切り離されたような白く薄暗い、線香の香りの充満する四角い空間の中に立ち尽くしていた。
線香の匂いが私の身体にまとわりつき、ロウソクの炎が微かに揺れている。
そして、ただ目の前には冷たくなった両親と、例えようのない感情が静かに横たわるだけである。
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