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『その子は東條の家の娘だよ。』
私が答えをしぶっていると、窓際で本を片手にした男の子が、ポツリと呟いた。
「え、何で……。」
『もう、有名な話だよ。君の存在を知らない者はココには居ないくらい。実際にお目にかかるのは初めてだけど。』
私の言葉を遮るように、その男の子は話を始めた。
『君、本当に東條多紀の妹なの?お金目当てで嘘ついてるとかじゃないの?』
さすがに私にもわかる。
敵意むき出しだもん、この人。
やっぱり、普通の学校にして貰えばよかったなぁ。
回りのみんなは、私がどんな返答をするのか黙って見守ってる。
「私は嘘はついてないわ。私を疑うなら、直接、多紀に聞けばいいじゃない。」
私はその男の子の方には見向きもせず、無表情のまま答えた。
私の態度のせいか、言葉のせいかわかないが、にわかにクラス内がざわつく。
『やだなぁ、冗談だよ。そんなに怒らないで?ごめんね。僕は、伊集院 楓(イジュウイン カエデ)、宜しくね。このクラスの委員長。』
そう言って彼は近づいてきて、片手を私の前に差し出し、多分握手するつもりなんだろうけど……なんか、嫌だ。
この人には絶対に触りたくない。
私は仕方なく、失礼だって事はわかってるけど返事だけを返した。
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