狐の憂鬱

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 イソップ寓話では、狐は知恵者、それも、腹黒い、悪知恵の持ち主として、名を馳せています。今回は、そんな狐のお話です。  狐はその日、病に伏せって洞窟に籠もっているライオンの見舞いに行きました。ライオンは、狐の訪問を受けると、大変喜んで、狐に頼みごとをしました。 「今度の病で、自分も大変苦しい状態だ。ひょっとしたら、これが今生の別れになるかもしれない。でももしかして、象を食べたら、元気になるかもしれない。もし君が僕の友達で、友情厚い動物なら、僕のために、象を騙してこの洞窟に連れてきてくれないか。奴を食べれば、僕ももう一度立ち直って元気になれるような気がするんだ。」  皆さんの知ってる話では、この後、狐が象を騙して連れてきて、ライオンが食べてしまう話になっていたのではないでしょうか。でも、良く考えてみて下さい。象は、体重2トンを超える、実は地上最強の生物なのです。肉食ではないので、ライオンを襲ったりはしませんが、本来集団攻撃で獲物を襲う卑怯者のライオンなど、一対一のバトルになったら、象の敵ではありません。ましてや病気で寝込んでいるのですから、踏み潰されるのが落ちです。  狐はライオンの奴、病気で熱を出して、頭をやられちまったか、それとも、それこそ象の糞に酔っ払ってしまったか(象の糞はライオンには、猫にマタタビのような効果があるとされています)。  とにかくまともじゃなくなっている、と思いましたが、まともじゃない奴にまともな事を言ってもしょうがないので、 「分かった。何とか方法を考えてみよう。」  と答えました。  こうして狐は、その場を誤魔化しましたが、ライオンとは一応友達であり、病気で弱っているのが、気の毒でもあったので、ライオンには無理な象ではなく、兎を騙す事にしました。  狐は兎の住む茨の館までやって来ると、玄関から、兎に呼び掛けました。 「やあ、兎君、元気かい。」            「何だ狐の野郎か。何の用だ。何の用にしろ、おまえのような、よこしまな奴の話には乗らないぞ。」  兎は狐が奸智に長けているという噂を聞いていたので、最初から、警戒心一杯です。
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