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最初、狐の言葉など信じるものかとあれほど警戒してしていたのに、まんまと騙されてライオンのいる洞窟に行ってしまいました。
本当に間抜けなお調子者です。
こうして、ライオンは兎を食べてちょっと元気になりました。
そこへ狐がやって来て、
「見舞いの品は気に入って貰えただろうか。」
と言いました。
幾分誇らしげです。ライオンから、当然感謝の一言もあるものと思っていたのでしょう。
ところが、ライオンは
「イヤハヤ、象が食べられると思っていたのに、兎だったのには、がっかりだよ。君も以外に使えない奴だな。」
と言いました。
このあまりの言い草にさすがの狐もカチンときてしまいました。2匹の友情は、この時終わったと言えるでしょう。
「いいだろう。君がそれほど望むなら、象をここへ来させよう。君が望んだものの真価をたっぷりと味わうといい。」
狐はそう言うと、すぐに象のもとへ行きました。
そして、次のように言いました。
「ライオンの野郎があんたの事をなめきって、一呑みに食っちまうって、言ってたぜ。それで、自分はライオンだから、象は恐がって近寄らないだろうから、何とか騙して連れて来いってよ。ところで、あんたライオンが恐いのかい。」
話を聞いた象は怒り狂ってライオンの所へ押し掛けました。こうして、ライオンは望みどおり、象を自分の洞窟に誘き寄せる事ができましたが、象を食べるどころではありません。怒り狂った象に、狭い洞窟で逃げ場もなく、あっという間に押し潰されて死んでしまいました。ライオンの煎餅一丁揚がり、てなものです。
この後、動物達の、その当時の王様であったゴリラが、この話を聞き、狐を裁判官に任命しようと三度にわたり訪問しましたが、狐は固く固辞して、森深く退隠してしまったそうです。
思慮深い事で世に聞こえ、後に明君と評されたゴリラ王が、何故それほど肩入れしたのか、今に到るまで謎とされています。
狐は(ゴリラ王以外には)誰にも理解されず世を終えました。
この話に敢えて教訓を求めるとすれば、馬鹿はやるなという事を好んで行ない、時宜に適した贈り物も愚か者にはその値打が解らず、他の者の贈り物にケチをつけるだけの輩はそれなりの報いを受けるというところでしょうか。
いえいえ、本当の教訓はゴリラ王のみが知っていたのかもしれません。
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