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「ゆっくりしていってね」
プリンとお茶を持ってきた由実が京介の部屋を出ていく。
京介に頼んだ服がどうなってるのか見たがった紗希の提案で京介の部屋でプリンを食べる事になったのだ。
「まだ型紙だからな、全然出来てないぞ」
「何それ?」
何やら複雑な線の描かれた紙を見ながら紗希がたずねる。
「…簡単に言えば設計図だな」
「へぇ~、本格的だね」
プリンを食べながら紗希はスプーンを口にくわえたまま感心して頷く。
「…普通だろ」
「そうかな?」
プリンを食べ終えた紗希がお茶を飲んでいると京介が思い出したように席を立った。
「これ、見てくれ」
そう言って部屋の隅にあったポスターのように丸められた布を持ってきて紗希の前で少し広げた。
「可愛い生地だね~、…もしかしてこれで作るの?」
白地に可愛らしい花柄の生地を見て紗希は京介にたずねる。
「ああ、一応確認だ、後で柄が気に入らないとか言われても困るからな」
「うん、すごく可愛い。…でも高かったんじゃない?」
「そうでもねぇよ。気にするな」
そう言って京介は生地を元の場所に戻した。
「まだまだ時間がかかるからな」
京介はそう言ってお茶を飲む。
すると紗希が京介の分のプリンをじっと見ている事に気が付いた。
「…食うか?」
「えっ!?良いの?」
京介の言葉に紗希は目を輝かせた。
(いや、今明らかに欲しがってただろ)
京介は思いながらも口には出さずに答えた。
「ああ」
「ありがとう~!」
いただきます、と言いながら京介の分のプリンを食べ始める紗希。
京介はその様子を照れくさそうに見ていたが、ふと思い出したように話を始めた。
「そういえば、話があるんじゃなかったのか?」
その言葉で紗希の動きが止まる。
「うん、それなんだけどさ…」
プリンを机に置いて話を続ける。
「弟の貴志のことなんだ」
「人助けならする気は無いぞ?」
「その話じゃないんだ。…アイツイジメられてたかもしれないんだ」
「…そうなのか?」
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