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大学も決まっていた彼女は卒業する前に突然『一人暮らししながらキャバクラで働きたい。』と両親に申し出た。
母は全く反対もせず、むしろ応援してくれる姿勢だったが、問題は父の方だった。
半分泣きながら反対していた。
父さんが反対するのも無理もない。
父は若くも大手会社の代表であり、いわゆる金持ちで何の不自由もない暮らしに、何が不満で水商売をしてみたくなったのかは全く理解し難かったのだから。
<芹香>『お水に偏見を持たないで?
立派な職業だし、一番、世の中の情報が飛び交う場所だと思うの。
大変な仕事だって事も分かってる。
でも、自分の力を試してみたいし、何よりも自分にとって大切な何かを得られる仕事だと思うから、やらせて下さい。
お願いします。』
一切、お金の援助はいらないと言った芹香に対し、父はある条件の替わりを前提に、渋々、了承した。
いや、賛成させられたに等しいだろう。
条件とは、親が持っているセキュリティの厳重なマンションに住む事。
勿論、高い家賃と光熱費も芹香に払わせるつもりなんてないらしい。
“お小遣いは毎月振込んでおく”と言った父に対して、
“それだったら、働く意味がない!邪魔しないで!”
父は“邪魔”という言葉に酷く落ち込んでいたが、一人暮らしする為の家具を就職祝いに見せかけ、芹香の気に入った物を買い与えて満足していた様子だった。
家族揃って食事する機会をなくさない為に
“実家へは定期的に帰って来るように”
これが、父の絶対条件だった。
父さんらしい…
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