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ひたすラーメンを食べながらも二人の会話に耳を傾けた。
<芹香>「てゆうか、この子、私の弟なの。
高校生で成績はあまり良くないからバカなんだけど、でも顔も良いし、身長高いから男性向けの雑誌のモデルしててね、
すごくモテてるから、さっきも女の子にナンパとかされてたの~。
姉としては鼻が高いわ~!」
<ヤッさん>「へぇ~、どうりでイケメン君ってわけかぁ~。」
バカは余計でナンパは芹香だってしてたしね。
<芹香>「ここに来る途中だったんだけど、車から手を振ってくる人がいて、よく見たら店のお客さんだったのね。
プライベートで私に気付く人ってあまりいないのかと思ってたのに、すぐ分かったって言われた時は何か少し恥ずかしかった。」
…は?お客さん?
ナンパって言ってたクセに…
なんの為についた嘘なんだよ、オイ!
<芹香>「その後ね、私が勧誘に捕まりそうになった時に裕也が中に割って入ってきて守ってくれたんだぁ。
姉思いで優しい自慢の弟なんだよ。」
中に入って守りたかったのは事実だが、最終的に自分で事を片付けたなんてヤッさんは知らない。
姉思いか…
自慢の弟…
姉弟の響きが俺の胸を痛めた。
ようやく俺が食べ終えた所で芹香が勘定を頼んだ。
俺が払おうとすると
<芹香>「いいよ。私働いてるんだから!」
<裕也>「てか、俺も一応、仕事してますけど…」
<芹香>「高校生が生意気な事言わない。
有り難くご馳走様って言えばいいの。」
そう言って勘定を済ませた。
<芹香>「ヤッさんご馳走様!
お釣りはいらないから、それでコーヒーでも飲んでね!」
<ヤッさん>「いつも悪いよ~。
来るたんび、チップ貰っちゃってよ~。」
<芹香>「小銭チップで少ないんだけど。」
二人は笑いながら、やりとりをした後、ヤッさんは俺に向かってコソコソ言った。
<ヤッさん>「せーちゃん、いい女だから色んな男が寄って来ると思う。
変なのがつかないように守ってやりなよ。」
優しい顔が印象的なヤッさんに軽く会釈して、また食べに来ようと思いながら店を出た。
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