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◆
翌朝。
差し込む冬の朝日に、目を擦りながら身を起こす。
まず、見慣れないベッドが視界に入って来た。
なんだろう、と首を傾げる。
続いて、身体に掛かっていた、自分の物ではない紺色の毛布が剥がれ、カーペットの上に落ちる。
床で眠っていたせいか、微妙に左肩が痛かった。
そしてふわりと漂ってくる、味噌汁の美味しそうな香り。
そこまでしてようやく、寝ぼけていた意識が覚醒した。
「…お早う。 起きた?」
キッチンからひょこっと顔を出す、エプロン姿の友人。
どうやら朝食の準備をしていたらしく、両手にお玉と菜箸を握っていた。
「…いま、何時?」
「7時過ぎ。 朝ご飯、食べるんでしょ? 用意しとくから、とりあえず、顔でも洗って来なさい」
まるで息子に対する母親のような態度で言うと、彼女はキッチンへ引っ込んでしまった。
完全に手慣れた会話のやり取りに、思わず苦笑してしまう。
まだぼんやりしている脳を起こす為、ここは素直に、お言葉に甘える事としよう。
のろのろと立ち上がり、部屋を見回す。
何時来ても綺麗に整頓されたアパートの一室。
自分とは大違いの清潔さに、感嘆のため息が漏れる。
一応とは言え、流石は女の子の部屋だ。
そんな感想を抱きながら、洗面所へ向かい、顔を洗う。
短髪なので大した寝癖もなく、整髪料みたいなモンも付けないので、毎度のことながら放置。
部屋に戻ると、真ん中のコタツの上には既に、朝食の準備が整っていた。
そして、朝の天気予報を眺めながら、茶碗にご飯を善そう友人の姿。
相変わらず手際が良い。
「悪いな。いつもいつも、急に押し掛けて、世話んなっちまって」
「別に…。 もう、慣れたから」
ぶっきらぼうに応え、素早い動作で俺の前に食器を並べていく。
それに感謝しつつ、俺は昨夜からの空腹を満たすべく、ほかほかの玉子焼きに箸を伸ばした。
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