2004.12.02 口腔清掃

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「にしても、昨日はまじで助かったぞ。 ホテル代なんて無かったし、危うく冬空の下で野宿するとこだった」 「気にしなくていいから。 仕事だったのだから、仕方ないし」 「いやいや。 真夜中、それも唐突に、図々しく押し掛けて来た男を、快く泊めてくれる女子なんて、そう居ねえって。 ……お、この肉じゃが、なかなか美味いな」 「別に、快い訳じゃ…。 それは昨日の夕飯の残りだけど。 口に合ったのなら、良かった」 感情の籠もらない、少しばかり冷たい喋り方をする彼女は、雨宮 氷雨(あめみや ひさめ)。 高校時代からの友人である。 黒髪のショートヘアで、いつもかけている眼鏡と、着飾らない服装が、落ち着いた雰囲気を醸し出している。 派手な、如何にも『最近の若者』的な外見が苦手な俺にとって、氷雨は非常に付き合いやすい相手だ。 少し目つきがキツく、普段が無表情なので、一見無愛想な印象を受けるが、無論、これは別に機嫌が悪い訳などではなく。 単に、これが彼女の自然体なだけであって。 それなりに付き合いの長い俺からすれば、目や口元の動きや雰囲気などで、自然と感情を読み取れる。 ただ、そのせいで、小学校や中学校では、相当大変な目に遭っていたらしい。 もっとも、そんなのは俺が言えたことではないのだが…。 だからこそ、俺たちは気が合うのかも知れない。 「そう言えば。 もうそろそろ、その仕事に就いて一年だっけ、夜霧」 味噌汁を啜りながら、訊ねてくる氷雨。 湯気で眼鏡が曇り、若干眉を潜めているのが微妙に可愛い。 「おう。 人の都合考えない無茶苦茶な上司だから、本当に参るぞ、ありゃあ」 「…苦労してるのね。 昨日の夜も、凄く疲れた顔してたし」
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