2004.12.02 口腔清掃

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この天壌市は、比較的寒い気候の地域ではあるが、夜とは言えここまで冷え込むのも珍しかった。 事務所まであと十分余り。 俺はたまらず、通りがかったコンビニで温かい缶コーヒーを購入した。 「……あったけぇ」 因みに俺はブラック派である。 微糖やらカフェオレなんて、甘ったるくて飲めたもんじゃない。 プルタブを開け、一口。 熱い液体を喉の奥へと押しやる。 「ふぅ…」 頭から爪先まで、身体が芯から温まるようだった。 そのままちびちび啜りながら、いつもの道を進んでいく。 ……と。 薄暗いT字路に、大の字に横たわる人影があった。 「…オィオィ」 呆れて溜め息が漏れる。 人影は車道のど真ん中に寝転んでいた。 恐らく、仕事帰りの酔っ払いだろう。 このまま車が通りかかれば、跳ね飛ばされること間違いない。 というか、この寒さでは凍死する可能性もあり得る。 頼むから、酔いつぶれてぶっ倒れるなら、人様に迷惑のかからないところにして欲しい。 正直、面倒事には関わりたくないが、かと言って俺がスルーしたのが原因で、リアルあの世行きになられても……困る。 化けて出られたりしたら堪ったもんじゃないし。 仕方ないので、声をかけてやることにした。 「あのー、もしもし? こんなトコで寝てたら、死んじゃいますよー…?」 反応は、ない。 こりゃあ重傷だ。 「もしもーし? 何方か存じかねますが、早く起きないとお財布の中身だけでも頂いちゃいま、」 そこまで口にして。 ふと、そこいら中に充満しているらしい妙な匂いに、言葉が途切れた。
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