2004.12.02 口腔清掃

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◆ 暗がりの中。 倒れた鬼頭の身体から立ち上る、黒い靄。 薄く透き通ったそれは、吸い寄せられるように、純白の少女へ集まっていく。 真っ直ぐに伸ばされた、すらりと長い指先へと。 やがて、鬼頭から黒い靄の流出が止む。 指先に集まったソレらは、球体状に纏まり、逃げ場を求めるかのように蠢いていた。 少女はそれを、感情の込もらない冷めた瞳で見詰める。 『去るがよい 主を失いし願望よ』 静かに唱える少女。 その言霊に呼応するかのように、黒い靄の塊が破裂し、宙へ霧散していった。 その様子を冷静な表情で見据えると、彼女もまた、白い気体へ溶け出し、足元に転がる微の体内へと還っていった。 ―――そんな、室内で起きた現象を。 “願望者”である彼女は、怯えた眼差しで、呆然と眺めていた。 彼女の手に握られているのは、鬼頭悠生が所持していた物と同様の“刃ブラシ”。 ぴくりとも動かない息子を見下ろしながら、噛み合わない歯をがちがち震わせる。 「くくっ……漸く尻尾を出したね、鬼頭昌枝(きとう まさえ)」 「!?」 唐突に背後から投げかけられた声に、彼女――――昌枝は振り返る。 視線の先。 廊下の突き当たりに、紅い浴衣を身に纏った、美しい少女が立っていた。 「キミなんだろう? 今回の黒幕である“願望者”は」 後退りする昌枝。 その滑稽な姿を嘲るかのように、少女、紅華は鼻を鳴らした。
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