2004.12.02 口腔清掃

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◆ 暖房の効いたバスを下車すると、冷え切った外の空気が、より一層凄まじく感じた。 相変わらず肌寒い。 冬の冷たい風を受けつつ、歩き慣れたアスファルトの坂を上っていく。 流れていく空の雲を眺めながら。 俺は、今朝の会話を思い出していた。 「有休?」 事務所のソファで目を覚ました俺に、紅華は、コンビニで仕入れて来たらしいマーボーまんをかじりつつ、言った。 「ああ。 二日続けての臨時出勤に緊急任務。 キミはボクの“期待通り”の成果をあげてくれたからね、カスカ。 三日間ほど休んでくるがいいよ」 「……どういう風の吹き回し?」 「それこそどういう意味だね? 兎も角、ボクが休んで良いと言ってるんだ。 部下は大人しく上司の命令に従っていれば良いのだよ、この下僕」 そんなやり取りをしたのが一時間前。 信じられない事に、今回は臨時手当も弾んでくれるらしい。 …あそこまで機嫌の良い紅華は滅多に見られない。 よく分からないが、あまり深く追求しておじゃんにされても困るので、とりあえず、ありがたく受け取っておこう。 珍しいこともあるもんだ。 自販機で購入したホットコーヒー(当然ブラック)を啜る。 口に含んだ熱い液体の味が分かる事に安堵する。 例の如く、あれだけ滅茶苦茶に荒らされた俺の口は、綺麗に元通りになっていた。 無論、“殺された”直後の記憶も、綺麗さっぱり残ってはいなかったが。 それなのに、あの歯茎や舌をガリガリ削られる感触は覚えてるんだから困る。 紅華から聞かされちゃいるけど………一度でイイから見てみたいよな、自分の能力。
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